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その奥は深いのか。
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ここではないどこか
 あちこちで同じ感想を持たれた方が居るようですが、俺もクラーク卿は、死去によっての終わりではなく、新しい世界に旅立ったのだと思えます。

 それはむろん、著作のもつ強力かつ肯定的な未来像から来るものですし、創世記からアポロ計画を経る、実物の宇宙開発への積極的な論考からもあるでしょう。
 
 クラーク卿のエッセイ「スリランカから世界を眺めて」は、第二次大戦中英国でレーダ研究に携わり、通信衛星で特許を取らなかった話や、その理論が実現し、インテルサットを介してニューヨークのキューブリックと連絡を「テレタイプ」でとりながら「2001〜」の企画を詰めて言ったり、という「SF」なライフスタイルと、スリランカの印象、風物、人物のエピソードが描かれています。

 この本を読むと、スリランカはクラーク卿の‘楽園の泉’。まさに「宇宙基地」だったと言えます。


スリランカから世界を眺めて
アーサー・C. クラーク 

 何らかの鬱屈をかかえる少年が、違う、あるいは有るべき未来を求めて旅立つ。
 ジュブナイルのストーリィとして普遍的なパターンのひとつです。

 クラークは海洋を舞台に、少年と科学者とイルカが織り成すジュブナイルSF‘イルカの島’を著しました。

 主人公が深夜、家の前で緊急停止した長距離ホバーシップに密航を試みるシーンは切なく、美しい。

 地球を旅立つクラーク卿は、スターチャイルドになっている。あたりがわかり易いところですが、もしかして少年の姿をしているかも。と思ったら、今頃になって少し泣けてきました。

イルカの島 (創元SF文庫)
イルカの島 (創元SF文庫)
アーサー・C. クラーク
| 魂の読書 | 23:03 | comments(0) | - | pookmark |
非情の空
 かつてパリを訪れたとき、あちこちの書店でサン・テグジュペリ生誕100周年フェアが行われていました。
 むろん平積みの本はフランス語で読めやしませんが、表紙を飾る愛嬌のあるコードロンやラテコエール機の写真と、飛行服を着た、おそらく実物大であろう、でっかいテグジュペリ本人のPOPで判りました。
 文学者である以上に彼はパイロットなのだと思えました。

 ドイツ空軍の戦闘機乗りだったリッパート老は、テグジュペリ機なら撃たなかったとコメントしておられますが、その場合直撃ではなく、降伏を指示―理想的には、乗機を捨てさせ、捕虜にしたと思います。
 丸腰の偵察機を戦闘機が撃墜するのは、不公平なようですが、偵察機がもたらす情報の方が、一機の戦闘機よりもはるかに威力を持ちます。偵察機のパイロットは、捕獲するか、死んでもらうかしかありません。

 テグジュペリの著作「夜間飛行」」は、飛行そのものがまだ冒険的要素を持っていた時代に、パイロットという「職務」を全うする厳しさが描かれています。ただ、それでも、というかその上に、「飛行」という行為のロマンチックさが顕れます。

 彼は、軍務を免ぜられる立場にありながら、そして年齢制限オーバーという規則違反をしてまで、なぜ危険な偵察機に乗ったのでしょうか?

 ドイツ戦闘機といえば、ペアで援護しあう有名なロッテ戦術ですが、リッパート老は、ソロで飛行していたのでしょうか?
 また、乗機はなんだったのでしょうか?メッサーシュミット?フォッケウルフ?

 夏の南仏。青い地中海。モナコもすぐそこです。その空で小さく獰猛なドイツ戦闘機が、青く塗られたロッキードF5偵察機に襲いかかる。マウザー機関砲が吼える。海と空が逆転し、青い双胴の偵察機は海に消える。

 飛ぶ事に戦い以外の意味を許されない時代があり、 24歳の若いパイロットは、齢をとった空の英雄をそれと知らず、殺した。
 その酷薄な瞬間。若き日のリッパート老と、テグジュペリ。時代さえ違えば、心温まるものになったかもしれない邂逅。

 戦争の悲劇ではありますが、飛ぶべき時を選ぶことができないのがパイロットなのかもしれません。
 「夜間飛行」に描かれたように。
| 魂の読書 | 19:46 | comments(0) | - | pookmark |